翌朝のゴハンも、ネニーおばちゃんお手製の朝ご飯。相変わらずすごい量で、朝ご飯だというのに、満腹です。
ここだけではないのですが、私はお世話になったゲストハウスに、絵はがき（富士山とか、京都とか、超ベタなやつね）に一言書いて置いていった。今回もネニーおばちゃんに絵はがきを渡すと、えらく喜んでくれました。
「ほかにも日本人が来たことあって、ほら、おみやげにこのマスクを置いていってくれたのよ」
みると、なぜかひょっとこのお面が飾ってあったりする。ほかにも折り紙があったり、どうやら日本人が結構行きつけなようです。
ほかにも、おばちゃんの娘さんの結婚写真をみせてくれたり（おばちゃん似）その孫の写真をみせてくれたり（こちらは旦那さん似だね）、甥っ子が船乗りで、日本に行ったことがあるよ、なんてことも話してくれました。
最初は、でっかいし、ちょっと強面だなあ、なんて思っていたのですが、ネニーおばちゃんも、その旦那さんも(ネニーおばちゃんが強力すぎて、ちと影が薄かったが)、すごく親切で、いい人でした。
「またドブロヴニクに来ることがあったら、ここに泊まってね！」
おばちゃんはそういってくれました。ありがとう。
国境
さて、今日はいよいよモンテネグロ入国予定。コトルの旧市街に宿泊予定。
宿を出ると、ドゥブロヴニク旧市街は、少しずつにぎわいを見せ始めていました。たくさんの観光客が、プラツァ大通りを歩き始めています。それに逆行するように、私はスーツケースを引きずって歩き出しました。
ピレ門前のバス停から、１Ａ、１Ｂのバスに乗ります。バスの切符は近くのキオスクで売っていて、一枚８Ｋｎ．バスに乗ると、入り口の改札機があるので、そこに通すのです。ネニーおばちゃんによると、切符一枚で往復できるようです。
再びドブロヴニクバス停にたどり着くと、例の日本に４回行ったことがあると行っていたおっちゃんがまたしてもいました。
バスターミナルでバスチケット購入。例によって、紙に、「Dvije karte za Kotor,Molim」（コトル行きのバスチケット２枚下さい）と書いて渡すと、チケットをくれました。一枚９８．３Ｋｎですね。あと、荷物をバスに預けるのに１０Ｋｎだったかな。
のこりのＫｎは両替して、最後のチャリ銭は、お水と絵はがきを買って終了。
これだけたくさんの国を廻ると、お金の両替が大変。ユーロになってずいぶん便利になったんだなあ、なんて思いながらバスに乗り込みました。
ドゥブロヴニクは本当に楽しかった。
また来たいな。
バスはゆっくりと進みだします。
アドリア海の向こうにドブロヴニクが見えて、山並みの向こうに消えていきます。
クロアチアの人々は、ボスニアと比べると、明るいし、関西系？っぽいノリだったような気がします。（同行した関西出身の友人もうなずいていたので、あながち間違ってないと思う）すごく明るいし、人を喜ばせるのが好きだし、とても親切。建物も綺麗で、豊かなんだなあ、という感じ。治安も悪くないし、旅行するにはもってこいだと思います。
ドブロヴニクに関して言えば、もうあまり戦争の後は残っていないような気がしました。たしかに、入り口に被害マップがあったり、スポンザ宮殿に、戦争で亡くなった方の写真が貼ってあったりはしました。人に、セルビアのことを話せば、ちょっといやそうな顔をします。でも、もうすぐぼろぼろのケーブルカーも撤去されるというし、どんどん発展していくんだろうな、という感じがすごくしました。
もうクロアチアという国は、ユーゴスラヴィアというくくりを必要としていないのかもしれません。かつて属していた古い楔を飛び越えて、自由に、新しい国を作り出そうとしているのでしょう。そんなことをひしひしと感じました。
例によって国境。メトコビッチの国境とは違い、クロアチア出国の方は、高速道路の入り口みたいな感じ。モンテネグロ入国の方けど、待たされましたかね。
バスの中でいったん乗客の名前を書かされ、そのあと車掌さんがパスポートを集めて国境に持っていきました。
ココは結構混んでいて、３０分ぐらい待たされました。今度の旅で何度も国境を越えたけど、地続きで別の国、というのがとっても不思議な感じがした。
で、国境を越えると、またしても町並みががくんと変わる。白い壁に朱の屋根はおなじなんだけど、もうすこし年期が入った感じ。ちょっと昔の日本の家並みのような感じもしました。
やがて、バスはヘルツェグ・ノビを越えて、コトル湾のほとりを走り出します。
これまた絶景です。
コトル湾は、アドリア海から続く入り組んだ入り江となっています。海は凪いでいて、まるで湖のよう。その入り江を縁取るのは、まばらに緑の見える白い岩肌の険しい山。海から急な角度で立ち上がっている山が、コトル湾を包み込んでいるようです。そんな景色が延々と続くのです。
ネウムからドブロヴニクへと向かう海岸線もすごく綺麗でしたが、こちらはまた違う美しさです。天気が良いのも幸いして、車窓から見える山と入り江の織りなす景色には神懸かり的でした。もう窓際にかぶりつき。
というわけで、ここは一見の価値有り。とくにドブロからコトルに向かう場合は右側に座ることをオススメします。絶景だよ！！
海岸線をバスは進みます。いくつかの小さな村や町が見えました。湾には遊覧船が緩やかに進んでいくのが見えました。
やがて、左手の車窓に石造りの立派な城壁が見えてくる。そこを少し通り過ぎて、バスは小さなターミナルにつきました。コトルです。
コトルのバスターミナルは、小さくて、日本の田舎のバス停のような雰囲気。そこから、バスが通り過ぎた道を逆戻りして、コトルの旧市街に入り込んです。
ボロいといえばボロいですが、、味があっていいんだよ
全体の雰囲気は、ドブロヴニクの旧市街を小さくしたような感じ。ですが、観光客がずっと少なく、迷路のようなひっそりとした道が続きます。
ときおりすれ違う人々も、地元の人なのか、ずっと身軽な格好でした。見上げれば、狭い建物と建物の間に洗濯物が干してあり、そのむこうにそびえるコトルの白い岩肌と、青空がのぞきます。そのコントラストがとても鮮やかで、なんども目をぱしぱしさせてしまいました。ドブロヴニクもすごくいいんだけど、コトルの方が、観光化されていないので雰囲気がすごくよかったです。
私の泊まるホテルは、コトルの細い迷路の中にありました。やっぱり旧市街に泊まりたいじゃないですか。
とってもわかりにくいのですが、小さな看板が出ていて、Hotel Marija と書いてあります。古い建物をそのまま使ってあるけど、木でできた建物の中はとてもきれいです。いままでずっとゲストハウス続きでしたがそれとはまた違って、設備もばっちりで、さすがホテルだなぁ、と思いました。
ちなみに予約したのは、In Montenegroという旅行会社にお願いしたのですが、ホームページの値段よりもちょっと値上げされてます。なんでも、新しいホームページを作っていて、そちらでは新しいねだんになっている、とのことですが、半年たってもホームページに変化なし。のんびりしてます。
とてもきれいで、いい感じのホテルでしたが、一つだけ欠点が。それは、外の喧噪がそのまま聞こえちゃう点です。宵っ張りならいいけど、早く寝たい人は、旧市街のホテルじゃなくて、旧市街ちかくの、Hotel Fjordとかの方がよいかもね。
でもおおむね居心地よし。ドライヤーも頼んだら貸してくれました。
コトルの旧市街の後ろには、すごい山がそびえています。その先に続くのは石の階段。上には小さく旗のはためく砦のようなものが見えます。
ここがコトルのハイライトのひとつ、カッタロの梯子。かつてのモンテネグロの首都ツェティニェへと続いているといいます。
ここに上るのは楽しみにしていたのですが、友人が疲れた、とのことなので、ホテルで待機してもらって、一人で寂しく上ることに。
地球の歩き方やロンプラによると、１ユーロかかるらしいのですが、入り口には誰もいないのでタダで上ってしまいました。
坂道は つづら折りになっていて上まで延々と続きます。道は、手入れも何にもされてなくて、ある意味あれ放題。石の階段も半分ぐらい崩れているところがあって、かなり歩きにくい。それでも、結構たくさんの人が歩いていました。
草ぼうぼう。真夏になったらどうなるんだろ？
しかし、このちょっと崩れかけた感じも逆に情緒があって、いいなあ、と思った。それに、途中に遮るものがないため、景色はすばらしくいい。つーか、この旅は本当に絶景続きです。旧ユーゴは、あんまり日本人は来ていないけど、なにげに観光資源豊富だと思います。
まあ、見てくださいよ、この眺め。
周りが山に囲まれているため、まるで湖のようですが、れっきとした海。この内海に護られて、コトルはトルコの支配から逃れ続けたのだといいます。そりゃそうだろう、こんな山道、攻められないよ。
ちなみにこのコトル、４月５月はオフシーズンだけど、真夏になると、セルビアからどっと観光客が訪れて、宿がなかなか取れないようです。しかも、いまは４月末でも半袖なので、７月８月は相当暑いのではなかろうか。そう考えると、結構いい時期に来たかもしれません。
道の途中には、聖マリア教会という小さな教会があります。中には入れないのですが、ちょっと日陰になっているので、一休み。
暑いので、水はかならず持っていった方がいいと思います。それから、もしも晴れているなら、悪いことは言わない、ぜひカメラを持っていった方がいいです。本当にすごい景色だから。たとえそれが写るんですだとしても、絵はがきになるような写真が撮れること間違いなしです。
コトルのこの城壁、私的には、この旅ナンバーワンの景色でした。
頂上にたどりついたのは、だいたい４０分くらい上ったあとでしょうか。スルジ山よりは全然らくちん。
てっぺんにあったのは、ぼろぼろの砦あとと、モンテネグロの国旗でした。
昔はココに兵隊さんがつとめていたんでしょうか。
夏草や 兵どもが 夢のあと
なんていう、芭蕉の俳句が脳裏に浮かぶ、そんな景色でした。
てっぺんからのぞけるコトルは、本当に地図そのものの形をしていて、かなりかっこいい。
こんなすごいものを、昔の人はブルドーザーもなしに作ったのか、と思うと、ため息が漏れた。
このすごい景色を見ることができただけでも、遠い遠いモンテネグロまで来て良かった、と思いました。
頂上は断崖絶壁になっています。でも、手すりなんてものはありません。日本でしたら間違いなく規制されてしまうだろうけど、ココはほったらかしでした。もしこの断崖絶壁から落ちてもきっと誰も気が付かないんだろうな、と思いました。
友人と約束した時間までだいぶあったので、私はその淵に腰掛けて、ぼーっとコトルの旧市街を眺めた。本当に遠くに来てしまったなあ、と思いました。日本という極東の地から、飛行機とバスを乗り継いで、言葉もろくに通じないこんなところまでよく来れてしまったなあ、と、なんだか不思議でした。まるで、地球のてっぺんに、一人きりでいるような気がしました。
そんなことを考えていると、後ろから、でっかいリュックを背負ったサングラスのニイちゃん二人組がやってきて、声をかけてきました。どうやら、東洋人が一人でいるのが珍しかったようです。
「一人で来てるの？」
「えーと、友人がいるんだけど、疲れてるからホテルで待ってるよ」
と私は答えた。逆に、どこから来たの、と聞くと、ジャーマンだよ、と答えてくれました。なんでも、大学を卒業したばっかりで、一ヶ月後にはスポーツジャーナリストになるので、卒業旅行でこの辺を廻っているのだそうです。下を指さして、
「あの黄色い屋根のところに泊まってるんだよ、１０ユーロだから安いね」
と言いました。彼ら曰く、このあたりは陸続きだし、バスで移動できるから、とても安上がりな旅ができるのだそうです。しかもドイツ語が通じやすい、とのこと。明日はクロアチアに入って、いろんな島を廻る予定だけど、詳しいことはまだ決まってないので、その場その場で決めるんだそうな。なんともうらやましい。
私はしばらく、他愛もないことを話した。日本からココまではどれくらいかかるの、とか、ドイツに来たことある？とか、長い休みが取れたら何をするの、とか。本当にどうでもいいことを。
だけど、世界の裏側から来て、たまたま出会った人と、こうやって話しているのが、すごく不思議でした。これも、あり得ないぐらいの確率なんだろうな、と思った。
で、ずっと一人で写真もとれなかったので、頼んで、写真も撮ってもらった。なかなかよく撮れてたよ。
私の知ってるドイツ語はたった２つで、そのうちの一つ、「ダンケシェーン」と言いますと、そのバックパッカーは、ちょっとうれしそうに笑った。
「よかったらドイツ語勉強して、ドイツにも来てね」
私は握手をして別れました。
ちなみに、もう一つ知っているドイツ語は、イッヒリーベディッヒ、というやつです。さすがにこれは使えなかったです。
コトルは町歩きがとても楽しい。迷路みたいなんだけど、狭いから、どこかで広場に出るので、迷う心配もなし。
その中でも目立つ、美しい建物、聖トリプン大聖堂。
ところで、この日は日曜日でした。残念ながら、こちらでは日曜日はほとんどのお店や施設がお休み。
ということで、あっちもこっちも閉まってるぅー、と町歩きをしていたら、この聖トリプン大聖堂の前で、おっちゃんに手招きされました。
「一ユーロで入れるよ。見学してごらん」
みたいな感じ。
入り口はおみやげ売り場になっていました。
なんでも１９７９年に地震の被害を受けて、修復したのだとか。中がちょっと新しめな雰囲気でしたのはそのせいかな。
ところでコトルは山に囲まれているので、午前中はほとんど日が当たらない。したがって写真を撮るなら午後がいいです。
なぜこんなことを書くかというと、本当に綺麗な町だからです。ドブロヴニクとか、以前行ったトロギールなんかよりもちょっとボロいのですが、そこがまた歴史を感じさせていい。
まだまだマイナーだけど、モンテネグロもセルビアから独立して観光立国を目指しているそうなので、これからどんどん人が来るようになるのかな。
でも、地元の人がのんびりしているのも、地に足がついた感じがしてよかった。
バールの下で、おっちゃんたちがアカペラで大合唱していたり。
地元の子供たちが激しく喧嘩していたり（？）
良いところでした。
ここで晩ご飯の写真を載せたいところなのですが、残念ながら写真を取り忘れてしまいました。
コトルは小さな街で、レストランもそんなにない。なので、選択肢は自ずと限られるのですが、ココは、地球の歩き方にも、ロンプラにものっている、「バスティオン」というところで、シーフードを食べよう！ということになりました。
ここがですねぇ、めっちゃくちゃおいしかったですよ。
バスティオンは、城壁登りの途中にあるからたぶんわかると思います。中はそこそこ高級そうな感じ。でも、ウェイターさんがあんまり英語わからず、私もセルビア語わからずで、メニューも読めない。どうすりゃいいんです。
ウェイターさんはミルコ顔でした。言葉が通じないと悟ったのか、いったん奥に引っ込んでしまいました。
魚料理を食べたいのに、困ったなぁ、なんて思っていたら、ウェイターさんがなんと料理前の魚をそのままお膳に乗せて持ってきてくれました。これがオススメだよー、なんて感じで、鯛っぽい魚を持ち上げてくれました。ので、それを一匹、二人で半分こしよう、と言いますことになりました。
まず食べたのが、シーフードリゾット。これ、おいしかったです。ドブロヴニクのリゾットもおいしかったけど、この旅行でこれがベストのリゾットでした。激ウマ。
んで、さっきの魚のグリル。これを、ウェイターさんが目の前で器用お皿に取り分けてくれました。これもねー、塩味が程良く聞いた白身魚で、おいしかったですよ。新鮮！ってかんじで。
デザートは、フルーツサラダ、でしたかな。アイスに、フルーツコンポートが乗っかってて、これもグッド。
締めは、お気に入りのトルココーヒー。残念ながら、ロクムはついてなかったけど。
満腹。ウェイターさんは、顔は強面な感じだけど、なかなか親切でした。最後に店を出るときに、目が合ったので、「ドブロでしたよー」と言いますと、ちょっとにっこりしてくれました。