２００７年４月。私はボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア、モンテネグロ、セルビアの４カ国を１０日ほどかけて旅しました。
ユーゴスラヴィアとは、かつて存在し、いまはもうない国の名前で、南スラブ人の土地、という意味をもちます。かつて、７つの国境、６つの共和国、５つの民族、４つの言語、３つの宗教、２つの文字、１つの国、と歌われたほどのモザイク国家だったのですが、１９９１年に勃発した内紛ののち、いまは６つの共和国がすべて独立してしまいました。
日本にとって、旧ユーゴスラヴィアはすごく遠い国です。距離的にはもちろん、心理的にも。だから、ほとんどの日本人はその実体をほとんど知らないし、知らなくても全く困らなかったりします。
わたしもその日本人のご多分に漏れず、対して興味もありませんでした。しかし、きっかけはひょんなところからやってくるもので、２００６年にたまたまツアー旅行で訪れたクロアチアが思いの外楽しかったのです。もう一度行ってみたいな、とガイドブックなどを読むうちに、旧ユーゴスラヴィア諸国もなかなか見所がありそうだ、と思えてきました。
この国々の歴史は複雑です。もう、とんでもなく複雑で、日本の国民からすると、めまいがするほどで、バンザイしたまま裸足で走って逃げたくなるくらいです。しかし、かつて一度訪れた国で争いがあり、多くの人が亡くなったと思うと胸が痛む思いがするし、同時に興味が湧いてきます。
そして、とても不思議なのですが、同民族同士で恐ろしい内戦を起こしたはずなのに、クロアチアの人々はとても親切でにこやかでした。そして治安も良いのです。この矛盾。いったい旧ユーゴという国はどうなってるんだ？
もう一度、クロアチアに行ってみたいし、せっかくだから旧ユーゴをまわる旅もいいんじゃないだろうか？
というわけで、私はバルカン半島を周遊する旅に出かけることにしたのです。