ハルバットのアイドル、ギギ君
ハルバットのアイドル、ギギ君
翌日の朝ご飯の食事も昨日に負けず劣らず豪華でおいしい。名残惜しいけれど、この居心地のいいハルバットとも今日でお別れ。
ところで、ハルバットにはダルメシアンのギギくんという１２歳七ヶ月の老犬がいます。彼にはジャーマンシェパードの彼女がいるらしいのだが種が違うので、飼い主が結婚を許してくれない。それで、ギギ君は恋煩いで夜も眠れないらしい。（と、ヴァリッダさんが熱く語ってくれました）
それにしてもこの宿は本当にいい宿でした。そういえば、支払いをするときにちょっとしたハプニングがあったなあ。ユーロで支払うつもりだったのですが、（ちなみに、オフシーズンらしく、ふたりで二晩１２７ユーロ。朝ご飯付きとしては安いと思わないですか）ユーロの小銭が足りない。そこで、足りない分はマルカで払ってくれということになりました。１ユーロ≒２マルカの計算。で、１２５ユーロ４マルカでめでたく支払い終了となりました。日本じゃ考えられないよね。
宿をでる間際、ヴァリッダさんが声をかけてくれました。
「バス停まで何で行くの？ トラムならふたりで３マルカだけど、混んでるしスリがでるかもしれないわよ。あなたたちは見るからにツーリストだし、重い荷物をもってるし。タクシーだと６マルカかかるけど、荷物も持ってくれるし、安心よ」
ををを、なんという心遣い。頼んでもないのにこんなに親切にしてくれるなんて、ちょっと感動。ヴァリッダさんの好意をありがたく受けて、タクシーを呼んでもらうことに。
私たちはヴァリッダさんに、どうもありがとう、と伝えました。彼女はにこにこして答えてくれました。
「あなた達は私たちのゲストよ。モスタルまで気をつけてね」
タクシーがやってきて、私たちは乗りこみました。ヴァリッダさんは、姿が見えなくなるまで手を振って見送ってくれました。
サラエボのバスとチケット。
サラエボにはバスターミナルが二つあります。一つは、セルビア人勢力地ＲＳにあるバスターミナル。これは主に、バニャルーカやニシュ、ポドゴリッツァに向かう。もう一方はムスリム人、クロアチア人勢力地ＦＤ側にあるバスターミナル。私たちが向かうモスタルには、ＦＤ側のバスで行きます。
当然現地語はわからないので、あらかじめ紙に書いておいた現地語をバスターミナルのおばちゃんに渡しました。
「Dvije kaｒte za Mostar,Molim」（モスタル行きの切符二枚下さい）
すると、おばちゃんは、次は９：５０発だけど、それでいい？ というようなことを聞いてきました。もちろんオッケー。
これが切符。レシートみたいにぺらぺらだけど、れっきとした切符なのです。
バス停の入り口では、おっちゃんが、乗り場は１１番だよ、と教えてくれました。サラエボの人はみんなとても親切。
ちなみに乗り場のことは「ＰＥＲＯＮ」というらしいです。バス移動のたびに、うぇあぺろん（のりばどこ）？と聞きまくったので、結構重要単語かも。
スナイパー通り。いまはトラムも通って平和そのもの。
バスは、少し遅れてやってきました。バスで移動する際は、大きな荷物が有るとき、バスのおっちゃんに預けることになります。これが確か１マルカ。
バスの外には、昨日高台から見下ろしたスナイパー通りが広がっていました。トラムが走り、自動車もアウディでしたり、ベンツでしたり、結構高級車が走ってたりします。多少ボコボコの家は残っているけど、新しい建物も多い。ホリデイインもユニスビルもぴかぴか。サラエボは確実に戦争の傷跡から復活しようとしているのでしょう。
それでも、昨日のツアーでガイドのサニーさんがセルビア人について言っていたように人々の心はまだ癒えていないのかもしれません。私は単なるツーリストにすぎず、それほど深いことは話していません。それでもなんとなく笑顔の下に複雑なものを隠しているような気がしました。優しかったサラエボの人を思い出しながら、私はサラエボを後にしました。
窓から見た景色。ボスニアはきれいです
サラエボをでてしばらくすると、田園地帯にでました。これまたのどかな景色。山は緑に覆われて、畑の周囲には白い花が咲いていて。桜っぽいような雰囲気もしたけど、リンゴとかかなあ。
ボスニアという名は、この地を流れるボスナ川に由来するそうです。対するヘルツェゴビナはかつてトルコの支配に長く抵抗したヘルツェグ公という人の名に由来するといいます。サラエボあたりはボスニア地方。モスタルはヘルツェゴビナに値する、みたいです。この辺の違いがよくわからなかったのですが、バスから窓の外をみてなんとなく納得しました。景色が違う、土地がちがう感じがしました。
ヘルツェゴビナ？岩が露出した感じ
写真だとちょっとわかりにくいんですけど、上がボスニア、下がヘルツェゴビナ。ボスニアの土地は緑豊かで土地が肥えている感じがしましたが、南下するに従って、岩が露出した山がちな地形になっていきました。このあたりからヘルツェゴビナかなぁ、なんて感じ。
まあ、あくまでも印象なんだけど。
クロアチア人街です。屋根が赤い色をしています
バスは１２時半頃、時刻通りに到着。
車窓からのぞく天気は晴れ。人々の格好も半袖。サラエボの寒さに備えてカーディガン＋ジャケットという私にはかなり暑い。けど、スーツケースはぱんぱんで、今更中に入れるわけにもいかず。
まずは今日の宿へ。今日の宿は、pansion mostar。この宿になったのはちょっと不思議な経緯があって、地球の歩き方に載っているpansion mostにメールを送ったら、なぜかpansio mostarから返事が来た。一泊１５ユーロとのことだし、返事も早かったのでココに決定したのですが、問題はバス停から遠いこと。（ちなみにモスタルの宿はメールを送っても返事をくれないところが多かったです。くすん） 観光地には近いんだけどね。
地図によると、マーシャルチトー通りをひたすら南に進んで、橋を渡った先。バス停にわらわら寄ってくるソベおばちゃんの声を振り切って、いざ南進！
マーシャルチトー通りを南進する前に川向こうの西のクロアチア人街に渡ってしまいました。行き方としては間違っていないはず。でも、なにしろ初めての土地、周りは異国人だらけ。東洋人は珍しいのか、スーツケースを引っ張る音が響くのか、なんだか異様に視線を感じます。サラエボの感じとは明らかに違います。これは土地柄なのでしょうか？
でも、あるけど、すすめど、石橋は近づかない。
もしかして、、、迷った？
地元民と比べると明らかに厚着な私に太陽はじりじり照りつけ、いやな汗が首筋を伝いました。
こんなところで道に迷う
もしかして……迷った……？
周りは見知らぬ異国人だらけ。荷物を抱えて呆然とする私。
そのとき、声が後ろからしました。
「May I help you？」
振り向くと、おじさんが一人立っていました。例によってボスニアの人は背が高いのです。ポロシャツを着て、首からプレートを提げていました。そこには「ＧＵＩＤＥ」と書いてあって。私でもわかる英語。ガイド、です。
「僕はここのガイドだよ、困ってるのかい？」
うわああ、マジですか。彼は、石橋はすぐ近くだよ、と言ってきました。私は渡りに船とばかりに、彼にｐａｎｓｉｏｎ ｍｏｓｔａｒの住所を見せました。
「ここに行きたいんだけど、わかりますか？」
彼はその住所を見て、少し考えてから答えました。
「わかるよ。ただ、すごく複雑な道だから、案内してあげるよ」
助かった、何とかなりそうだよ。ちょっとほっとした私たちに彼はかぶせるように言ってきます。
「１０ユーロくれたら」
……なんですと？
１０ユーロ、すなわち２０マルカ、いまのレートだとだいたい１６００円。ボスニアに来てから３日経っているのでなんとなくお金の価値がわかってくるのですが、タクシー移動でそれなりの距離を移動したって８マルカぐらい。
それをただの案内で１０ユーロは高すぎるんじゃないですか。
つまり、こいつは旅行者めあてのぼったくりだ！
「No, thank you」
即答。
迷ってない、迷ってないぞ。迷った気がしたのは気のせいです。石橋が近いのはわかってるし、石橋のすぐ近くに今夜の宿があるのも間違いないのです。
ガイドプレートのおじさんは、一瞬びっくりしたようでしたが、別にどうということもなく私たちに背を向けてしまいました。
私は重たいスーツケースを引きずって再び歩き出しましｔ。
川の流れる音がしました。そちらに向かって歩きだします。きっとむこうに石橋があると信じて。
トルコ人街。石造りの家々。
少し歩くと、細い川が見えてきました。小さな橋を渡ると、下り坂の道が見えて、私たちはその道を歩きました。
ガード沿いに緑色の美しい川が見えました。おそらく、これがネレトバ川なのでしょう。
さらに進むと、いかにも地元の道、という感じの通りにでました。すると、見えました！「Pansion Mostar」の看板です。
やったー、と思いながらそちらに向かうと、宿らしきものは見えず、少し奥まった駐車場の先にふつうの住宅があるばかり。しかも、鉄の分厚い扉が入り口を遮っています。それが三つ。一応インターホンはあるけど、ふつうに家主の名前があるだけで、これじゃあどれが入り口かわからないじゃない！
ああ、やっとたどり着いたのになあ。
鉄の扉。のどかな観光地に見えて意外とセキュリティが厳しい
私は恨めしく鉄の門を眺めました。そういえば、モスタルも、サラエボも、個人宅のセキュリティはとても厳重でした。ハルバットも、入り口はオートロックで、防犯カメラがついていたし。来る途中の道で、要塞のごとく、塀の上にガラスの破片が埋め込まれている家を見たし。モスタルは隣人同士が殺し合いをするという凄絶な戦いがあったといいます。戦争が終わって１０年以上経つせいか、ボコボコというほどの家はなかったけど、わだかまりはまだ残っているらしく、こういったところにそのしこりの後のようなものを見つけてしまうのです。
「May I ｈｅｌｐ ｙｏｕ？」
スーツケースを抱えてうろうろしていた私たちに、またしても声がかかりました。振り返ると、今度はおばちゃんでした。買い物帰りなのか、手に袋を抱えて、もう片方の手にはアイスを持っています。
「この住所を探してるんですけど」
「ああ、ここで間違ってないわよ。予約はしてあるの？」
「予約はしてあります」
「じゃ、この奥にいって、インターホンを押せば大丈夫よ」
おばちゃんはそういって、アイスを食べながら行ってしまいました。
どうやら間違ってはいなさそう。私たちは、もう一度鉄の扉の前にたって、インターホンを押しました。
かわいいお部屋で、お風呂も快適。
インターホンを押すと、ぷちっという音とともに、声が聞こえてきた。女の人の声でした。
「Hello?」
あー、ココはやっぱり英語だよなあ、と思いつつ、中学生英語をしゃべる私。
「えー、ハロー。ここはパンシオンモスタルですか？」
「Ｙｅｓ」
「私の名前はモリリンといいます。きょうこちらに予約しているのですが。。。」
「Ａｈ，，」
インターホンはいったんぷちっと切れました。しばらくして、鉄の扉が開いて、上下ピンクのジャージを着た若い女の人がでてきてくれました。金髪をくくっていて、顔立ちがふっくらしたとても優しそうな感じの綺麗な人。彼女はおっとりとした口調で言いました。
「いらっしゃい。待ってたわよ〜」
優しそうな笑顔に、めちゃくちゃほっとするよ。
やったー、たどり着いたよー。もう、暑いし、道のりは長いしでどうなるかと思ってたんだよー。
女の人の名前は、マリヤさん。メールでやりとりしてくれたのも、マリヤさん。マリヤさんは私たちを泊めてくれる部屋に案内してくれました。壁が緑でとってもカワイイ部屋でした。
サラエボの格好のままの私たちはとにかく暑そうに見えましたみたい。マリヤさんはクーラーを入れてくれました。
「ココがあなた達の部屋。カギを渡しておくわね。入り口の鉄の扉はこっちのカギで開けてね。向かいは共同のバスルームになってるから、この部屋を使ってね。何か用があったら下に来て。私そこにいるから。じゃあね〜」
マリヤさんはおっとりした感じでゆっくり英語で言いますと去っていきました。
疲れた。本当に疲れたよ。結局、バス停からペンションまで４０分くらい歩き回っていた。
これが宿周辺。右側の町並みの少し裏側にｐａｎｓｉｏｎ ｍｏｓｔａｒはあります。
今晩の宿にたどり着き、重い荷物もほどいて一安心した私たちは、サラエボから来ていた上着を脱ぎました。気温が全く違うんだな。こちらではTシャツ一枚でも十分かも。
一休みしてから、私たちは周囲の散策に向かいました。周囲は住宅街と言った感じで、すぐ近くにミニスーパーもあっていい感じ。宿にたどり着いてしまえば、旧市街にもとても近く便利な立地。宿をでて５分も歩かないうちに、ネレトヴァ川の見える位置にたどりつきます。
川の色は、深い緑色をしていて、ゆっくりと流れていました。
モスタルは、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争のさい、街の中のクロアチア人とムスリム人が争いあった激戦地だといいます。
１９９２年ボスニア・ヘルツェゴビナの独立が宣言した際、在ボスニアのセルビア人は ユーゴスラビア人民軍の応援を受けてボスニアの大部分をすぐに占領したそうです。モスタルの周辺にもご多分に漏れなかったけど、クロアチア人とムスリム人が協力してセルビア人をモスタルから追放してしまいました。
問題はそのあと。モスタルは、ボスニア・ヘルツェゴビナにおけるクロアチア人の最大拠点なんだそうな。そこで、クロアチアは自らの勢力拡大を求め、解放したモスタル周辺を Republik Herceg-Bosna（ヘルツェグ・ボスナ共和国）とし、その領域をクロアチア本国と統一することを要求したのです。モスタルはその共和国の首都になるはずでした。言ってみれば、どさくさに紛れて領土拡大をはかったわけです。
結果、１９９３年に再び紛争が勃発することになります。先年にはセルビア軍をともに追い払ったはずのクロアチア人とムスリム人の間に。それまでは、ムスリム人もクロアチア人もともに暮らしていたはずの狭い街の中で。
ムスリム人の地区は激しい攻撃を受け、モスタルの象徴でもある石橋（スタリモスト）も崩壊してしまいます。
一時期はクロアチア側が優位でしたが、第二次大戦後、国境線の変更は認められていないらしく、クロアチアの行為は国際法に反するとされ、クロアチア側は外国の圧力を受けることに。そして、１９９４年、再びムスリム側と協力して市街戦は集結したとのことです。
それ以来、町はクロアチア人側とムスリム人側の地区に分かれてしまったのです。
美しい、このネレトヴァ川がその境なのです。
世界遺産 スタリモスト。美しい……
川向こうを見ると、とても美しい橋が見えました。２００４年に再建されたモスタルの石橋です。さんざん目印にしたのだけど、実際に目にするのはここがお初でちょっと感動。
周囲はおみやげやさんがいっぱい。歩いているだけでもなかなかたのしい。ちなみにこのおみやげやさん、ボスニアのお金マルカに加えてユーロ、そして、クロアチアのお金クーナも使えたりします。
サラエボのおみやげやさんに似てトルコ風の銀食器や、トルココーヒーセットも売ってたりしてとってもかわいい。トルココーヒーはすごくおいしいので、セット買おうかなぁ、ともおもったけど、考えてみればコーヒー豆自体がないから買っても無駄か、とあきらめました。
トルココーヒーはほんとにおいしかったです。コナコーヒーみたいな感じですな。
一見美味しそうですが……
さんざん歩き疲れたので、いよいよお昼ゴハンに。
せっかくなら川沿いで食べようということになり、ムスリム側の川沿いのレストランにはいってみました。
結論から言っておきます。とぉっても料理まずかった(^-^;)
なるほど、これが観光地のぼったくりなのね、なんて思いながら、ゆですぎてコシもへったくれもないシーフードパスタをたべる私。まあ、でも、おなかへってたのでぜんぶたいらげてしまったんだけど。お代がそんなに張らないのと、ウェイターさんが親切なおっちゃんでしたのが救いかな。
ただ、ロケーションはすっごくよいのと、飲み物はふつうにおいしいので、ちょっと休憩するにはいいと思います。トルココーヒー、おいしかったし、トイレもすごくきれいでしたしね。
というわけで、モスタルの川沿いのレストランは要注意！
レストランからの眺め。眺めは最高なんですが、、。
この眺めの向かいのレストランはまずいデスよー
あちこちに走っているＯＤＡバス。日本人は知らない……
とりあえずおなかもふくれたので、明日のドブロヴニク行きのバスの時間でも見に行こうと、再びバス停へ。
道行く先に通りかかる黄色いバスは、日本のＯＤＡからのものらしい。from the japanese peopleとでかでかと書いてあるんだけど、、、ほとんどの日本人は知らないんだよねぇ。まあ、役に立っているようでなにより。
途中で雨が降ってきて、三十分くらい雨宿りをしながらバス停にたどり着きました。しかし、ドブロヴニク行きのバスの時刻表の読み方がわからないのです。現地語だらけなのと、日に当たってバス停の時刻表の字があせちゃってるせいで。
あーでもない、こうでもないと時刻表とにらめっこしていると、声がしました。
「あんたたち、日本人？」
ちょろん、と顔を出している男の子がいました。年の頃は、たぶん１０歳くらい。控えめにこちらを眺めてはにこにこしていました。
「うん、日本人だよ」
へぇぇぇ、といわんばかりに物珍しそうに私たちを見る男の子。なぜか食べてるチョコを差し出されて、これたべる？ と言われてしまいました。パンダかカピバラになった気分。
バスに乗るの、というようなことを彼は私たちに言ったんだと思います。ドブロヴニクに行くの？と。
「うん、そう。でも明日だけど、時刻がわかんないの」
すると彼はバス停のチケット売り場を指さしましたた。ついてこいというように中に入って、チケット売り場のおばちゃんを指さして。どうやら、聞いてみたら、ということらしい。
ということで、チケット売り場のおばちゃんに、ドブロヴニクへのバスの時間を聞いてみました。おばちゃんは現地語で何か言ってきたが、私たちが言葉がわからないと思うと、紙切れに、７：３０ ２７KM、１０：００ ２１KM、１２：３０ ２７ＫＭと書いてよこしてくれました。つまり、七時半と１２時半出発は２７マルカで、１０時発は２１マルカかかるという意味みたい。ドブロヴニク行きのバスの時間ゲット、です。
私たちは、男の子にお礼を言いました。彼の名前は名前はエドくん。エド君の親切がうれしかったので、たまたま持っていたのど飴をあげました。すごくうれしそうに食べていたけど、酸っぱかったのかびっくりしてたみたい。日本の飴が珍しいのか、空袋を大事そうにポケットにしまい込んでいたのが印象的でした。
わたしたちは、それから少しの間一緒に歩きました。
エド君は、あんまり英語がわからないのか、それほど話しかけてくるわけではないけれど、終始にこにこしていました。石橋までの近道をおしえてくれて、近くのモスクを指さして、あそこ行ってみてね、みたいな感じのことを伝えてきてくれいました。
一緒にいたのは本当にわずかな間でしたけど、とても心が温かくなった気がしました。
山頂にそびえる十字架……
バス停から戻って、私たちは再び旧市街をそぞろ歩き。
モスタルは小さいながらも美しい街です。モスタルの東岸の旧市街は、モスクが並び、なんとなくオリエンタルな雰囲気。日差しのせいかもしれないけど、サラエボともまたちょっと違う感じ。なんでも、内戦後、住む家は後回しで、アラブなどイスラム諸国がこぞってモスクを寄贈したとかしないとか。
こんな町並み。あちこち出来たてのモスクだらけ。
地図をみながらコスキ・メフメド・パシナ・ジャーミヤにまわってみたましたが、ここからの眺めも絶品。緑に流れるネレトヴァ川の上を鳥が渡り、平和そのもの。ここで本当に紛争なんてあったのかな、と思ってしまいます。
そこで、あるものに気づきました。ここから、眺められる山のてっぺんに、十字架が立っているのです。
この十字架は、きっと戦争を悼むものなんだろうな、と思っていたのですが、実はちょっと違うようです。なんでも、キリスト教のフランシスコ会が寄贈したものらしいのです。
考えてみてください。この街は、イスラム教と、キリスト教の混合している地域です。そこに、どのモスクのミナレットよりも高くキリスト教のシンボル十字架が立っていると言いますことは、、、ムスリム人への嫌がらせ？ それとも、クロアチア人がこの街を支配してるんだぜ、という証？
ともすれば見過ごしがちになる観光地の景色にも、気がつけばいくつもの戦争の傷跡が残っているのです。
橋の上。観光客だらけ
石橋の上には、たくさんの人がいました。私たち以外にも、たぶんドイツやイタリアから来た人だと思うのですが、たくさんの観光客がいて、とてもにぎやか。日本人以外でも、観光地に来れば写真をとりまくるんだなあ、なんて変な関心しちゃいます。
石橋のてっぺんに、なぜか、水着姿のニイちゃんが立っていて、周りに人が集まっていました。モスタルは暖かいとはいえ、水着でいるにはちと寒い。おまけに、この辺の人はガタイがいいからなんというか、目立つのだな。
なんでも、お金をもらって（３０ユーロ？）、この石橋の上から飛び込む商売をしているのだそうな。
でも、６０メートルもあるんだよ？？ ええー、マジですか、なんて思っているうちに、青い水着のニイちゃんが、どぼんと川に飛び込んでいきました。
んー、体を張ってしごとしてるなあ。
美味。
なんて楽しんでいるうちに、いつの間にか日が暮れてきました。。ヨーロッパの夏は日が長いのです。サマータイムのせいもあるが、７時半でも結構明るいんだな。
ゴハンを食べようか、という話になったのですが、昼に食べた時間が中途半端でしたので、それほどおなかがすいていないのです。
そこで、ピザをテイクアウトすることにしました。昼のゴハンがあんまりな代物でしたので、夜はおいしくしたいね、なんて話していました。そこで目をつけていたのが、昼間、地元の子供たちが集まって食べていたピザ屋さんです。あんまり英語は通じないけど、ジェスチャーと気合いで何とかテイクアウトに成功！ ８マルカでおっきなピザ。宿の近くのマーケットでイチゴジュースを買って、部屋で食べることに。
部屋に戻り際、マリヤさんにあった。せっかく合ったので、宿泊料を払いたいことを言いますと、「いいわよ〜」なんて感じで、すぐに対応してくれました。
領収書を待つ間、マリヤさんの旦那さんらしき人がでてきて、「ようこそ、今日泊まり？」みたいな感じであいさつしてくれたり、窓の向こうで子供たちがプレステ２（だと思う）で遊んでいる様子が見えたりした。マリヤさんはガーデニングをしていたらしく、いくつもの鉢植えが出してありました。マリヤさんに限らず、このあたりの人は、窓際にも庭にも花を絶やさない。生活を楽しんでいる様子がなんとなくうかがえて、ホテル以外に泊まるのもいいもんだな、と思いました。
さて、部屋に戻ってピザをあけてみることに。
んー、これは成功！ かなりおいしい！
下の階では、マリヤさんの家族がわいわいと楽しそうにしている気配が伝わってきます。
マリヤさんは、戦争の時もココに住んでいたのかなあ。だとしたら最前線でしたろうに、、。なんていろんなことを考えながら、私は眠りについたのでした。