朝のサラエボ
朝のサラエボ
いしやきいも。
目が覚めて一番に聞こえたのはスピーカーから流れるそんな声。
石焼き芋？ そんな馬鹿な。ここはボスニアのサラエボのハズ。
窓を開けてみると周囲は霧に包まれていて、幻想的な風景。まだちらちらと街の明かりが見えるところも。
その景色のむこうから、「いしやーきいもー」という日本のスピーカー音によく似た声がきこえてくるのです。なんだろう、と考えこんでしまうのですが、はたと思い立ちました。
イスラムのアザーン、朝のお祈り。
ボスニア・ヘルツェゴビナは、東西文化の十字路といわれています。というのも、キリスト教のカトリックの勢力と、オーソドックス（正教）の勢力の境目の地帯であるために、両方の宗教を信じる人がいるからなのです。そして、歴史的にトルコの支配を長く受けていたため、イスラム教を信じる人もいるのです。サラエボはその３宗教を信じる人々が仲良く暮らしていたコスモポリタンだったのです。
紛争前までは、ですが。
ヨーロッパなのにイスラム教。なんか不思議なところだなあ。
ハルバットの朝ご飯。出来たてで超美味！
七時半くらいにダイニングに降りていくと、オーナーのムーモさんがグッドモーニング、と声をかけて席を教えてくれました。ムーモさんはめがねをかけたやさしそうなおじさん。
席に着くと、昨日のアニサちゃんとはちがう、かわいらしい女性が満面の笑みで、
「朝ご飯食べられるわよ。卵は何がいい？ スクランブルエッグ、オムレツ、フライドエッグ、なんでもご希望に添うわ」
と聞いてくれました。
とりあえず、ミックスのスクランブルエッグを頼みました。写真のこれですよ、これ以外にもフルーツ、ヨーグルト、オレンジジュース、コーヒー、そしてパンは食べ放題と、これはもう、ほんとーに、んまかった！
この料理をしてくれた女性がヴァリッダさん。
ムーモさんの奥さんで、お子さんもいる。とてもそうは見えないかわいらしい方。この後もいろいろお世話になりました。このあと、いろんなホテルやペンションや、ソベに泊まったけど、やっぱり宿は人だなぁ、と、この後しみじみ思うことになります。が、まぁ、それは先の話。
朝のバシチャルシャ
おいしい朝ご飯をいただいたあと、いよいよ市内散策。ハルバットは、サラエボ旧市街バシチャルシアにすごく近いのでとても便利。
朝のうちに少し雨が降ったのか、曇り空のサラエボは、思ったよりも寒かったです。なので、中にカーディガンを来て、その上にさらにジャケットで出発。
バシチャルシアは、サラエボがオスマントルコによって治められていたときの名残を残しています。昔はトルコの職人街でしたそうな。写真を見てもわかるように、妙に東洋っぽい雰囲気を残しているでしょ。でも歩いている人は、明らかに西洋人。
奥にはセビリと呼ばれる水飲み場があり、周囲には常に鳩が集まっています。人が歩くたびにぱたぱたと飛び立つ様はとても平和な感じ。
周りにはおみやげやさんが立ち並んでいて、様々な銀食器なんかが売られていてとても綺麗。かとおもうと、どうやら空薬莢を改造したと思われるボールペンも、いっしょに並べられていたりするのです。こういうところが、戦争の名残なのだろうけど、こういうものまで観光資源にするのって、たくましいと思う。
なんと空薬莢から作ってあります！
ヨーロッパなのに、イスラム教のモスクがある
前にも述べましたが、サラエボは宗教のモザイクとなっています。旧市街はそれほど広くないのだけど、ちょっとあるいただけで、イスラムのモスク、カトリックの教会、正教の教会と回れてしまうのです。
サラエボの過半数を占めているのが、イスラム教を信仰するムスリム人。といっても、ほかのクロアチア人とかセルビア人と人種が違うわけではなく、ただ宗教が違うだけ。見ました目はほとんど変わらないのです。中にはイスラム風の黒いベールをかぶった女性もいて、彼女たちが歩いていく姿はとても美しいと思いました。
セルビア教会。とても静謐な雰囲気
次はセルビア正教の教会。
サラエボ市内では今はセルビア人はあまり いないとのことなのだけど、教会の内部にはおじいさんがいて、こんにちは、と声をかけてくれました。彼はセルビア人なのかなあ。
正教の教会はこの先いくつも見ることになるけど、カトリックの教会とは違う特徴がわかってきました。
まずは、イコンがあります。正教では、信者は神様への取りなしを聖人（マリア様とかだね）にお願いするのです。それゆえ、東方正教には、奇跡を表した多くのイコンが有るわけ。
また、キリストの像を造ることも禁止されています。というのも、神様は人間には表現できないとされているから。それゆえ、カトリックでおなじみの貼り付け十字架はみられないんですね。
あと、イスが壁際にそってだーっとあるだけで、真ん中は広間みたいになってます。天井からのぞく光がとてもきれいでした。
サラエボのカトリック教会
最後がカトリックの教会。
バラ窓がきれいで、これも紛争の時に的になったらしいです。
私たちが訪れたときには、綺麗に修復されていました。
これらの教会が、徒歩５分以内の位置にあるのが、サラエボの民族融和な感じなんだなあ、などとおもうのでした。
トルココーヒーです。甘くて美味しい
さて、ひととおり旧市街を歩き回ったところで、トンネルミュージアムに行ってみることに。
地球の歩き方なんかをみると、トラムで終点のイリジャまで行き、そこからタクシーに乗れ、とかいてあったけど、ちょっと高そうだなあ、ということで、旅行代理店に半日ツアーがないか聞いてみることにしました。
Turisticka Agencija &Hostel Ljubicicaという、バシチャルシアの北向かいにあるインフォメーションに入ってみると、ちょっと濃いめの強面おばちゃんが座っていました。
「すいません、あのー、トンネルミュージアムにいく半日ツアーってないですかねぇ」
「？」
どうやら発音が悪くて通じなかったみたい。私の英語は発音が悪いらしく、以後、そこかしこで聞き返されることになります。ぐっすん。まあ、それはともあれ、仕方ないので、なにかの役に立つかと思い持っていった旅の指さし会話帳クロアチアをひらいてみました。旧ユーゴ圏は、ボスニアだろうがクロアチアだろうがセルビアだろうが、基本的に言葉はおなじで通じるらしいので、ここボスニアでも使えるに違いないと思ったのです。ちなみに後の話になるが、この指さし会話帳は、旅の後半、英語が通じないところでめちゃくちゃ役に立ちました。やっぱり言葉は大切です。
「izlet」 （エクスカーション、という意味らしい）という単語を指さして、トンネル、トンネルと繰り返すと、おばちゃんは、あるよ、といって、紙っぺらを指さした。
「Excursion:
Story about War.history & Tolerance Sarajevo war Tunnel & Tour around the city
Drive through sarajevo: You can see new parts of sarajevo」
おおっ、これこれ。こういうのさがしてたんだよね。参加費一人２５KM（１KM＝８０円ぐらいなので、２０００円くらいだね） 。
タクシーのって、トラムのって、とやっていると、疲れるし、お金もかかるだろうから、ガイドさん付きのツアーでいろいろ回れるのはなかなかよいではないですか。
「今日このツアーやるの？」
「毎日１１時から。もし申し込むならここに名前書いてね」
おばちゃんに言われるままに、ノートに名前を書き込む私たち。すでに何人かが名前を書き込んでいたので、このツアーって、結構はやってるのかもしれない。
１１時までには少し時間がありました。
「ココで待ってればいいの？」
「あっちの奥にカフェがあるから、コーヒーでも飲んでるといいよ」
と教えてくれました。
言われた先にはインターネットカフェみたいなのがあって、バックパッカーらしき人がネットやってました。私たちはトルココーヒーを飲んで一休み。
11時ちょっと過ぎに、サニーさんというガイドが現れました。
サニーさん。なかなかのイケメンで、英語がぺらぺら。
英語ぺらぺらで、しゃべりが早すぎて、聞き取れないところもあったり。ちなみに、ボスニアの人のしゃべる英語は、ゆっくりで、日本人にも聞き取りやすいと思います。
９人のりのミニバスに乗って、ツアー開始。バスはトラムの走るマーシャルチトー通りを西に進みます。
しばらく行くと、右手に市場。「ココにセルビア人が砲撃を加えて、７０人以上がなくなったんだ」とサニーさん。
さらに行くと、バスはスナイパー通りへ。
「あの黄色い建物がホリディイン。あっちがユニスビル。こっちが旧共和国議会ビル」
とサニーさんの解説は続きます。バスは共和国議会ビルのところを左に曲がってブルバニャ橋を抜けるとくねくねした坂道を上ります。地球の歩き方の地図を見ながらと、まもなくRS（セルビア人共和国）との境を通り過ぎました。でっかい看板が立っていて、ここからRSだよ、と告げています。
一瞬緊張したのですが、RS側は至って平和な景色が続いていて、まさしく田園風景そのもの。おじさんが畑仕事をしていたり、小さな子が走り回っていたりした。地雷とか、大丈夫なのかなあ。
それでも、たぶんセルビア人だと思われる田園風景の人々の見ました目は、サニーさんや、ヴァリッダさんたちと、全然変わりませんでした。すくなくとも、私たち日本人にはわからなかったのです。
トンネルミュージアム。弾痕でぼこぼこ。
田園風景の中を走っていたバスは、しばらくしてちいさな建物の前にとまりました。みると、建物一面にぼこぼこに穴が空いていて、なかなかエグい感じ。周りが平和そのものの景色であるだけに、なかなかシュールな感じです。
どうやらここがトンネルミュージアムみたい。
サニーさんは、私たちと、その他アルゼンチンからきたとかいうバックパッカーとかを引き連れて、トンネルミュージアムのなかに入りました。
ミュージアムの中はそんなに広くないですが、紛争当時に使用されたという空薬莢や、ヘルメットや、雑納なんかが展示してあります。そして真ん中に、サラエボがセルビア軍に包囲されていたときの地図が張ってありました。
展示品の数々。生々しい戦時品たち……
サニーさんは英語で説明を開始。正直、かなりスピードが速くて半分以上わかりませんでした。すいません。ただ、察するに、おおよこんなようなことを話していたと思います。
「サラエボは１９８４年にオリンピックが開かれた年だ。そして、１９９２年から１９９５年までは戦争がおきた街だ。この町はセルビア軍に包囲されて、約１０００日間を耐え抜いた。封鎖されたサラエボは補給を絶たれたが、空港と市街をつなぐこのトンネルが生命線となった。トンネルは長さが８００メートル、幅は１メートル、高さは１．６メートル。サラエボの人は、補給をするために重さ２５キロもの荷物を背負ってこのトンネルを歩いたんだ」
ほかにも国連がどうとか、セルビア軍がどうとか言っておりましたが、後半は英語で頭がもうろうとしてほとんど聞き取れず。一緒にツアー参加していた欧米系の人がふんふんとうなずいていたのがうらやましかったですよ。
説明が終わると、こんどはビデオの上映。
トンネルの入り口と、迫撃砲の跡
サラエボの街がセルビア軍の砲撃でボコボコにされる結構衝撃的な映像と、後半はトンネルでどのように荷物を運んだかが描かれたビデオ。
トンネルの中は雨が降ると下に水がたまって非常につらそうでした。
それに、高さが１．６メートルっていうのはかなりつらかったんじゃないかなあ。
なにしろ、ユーゴの人はむちゃくちゃデカイんですよ。
その辺を歩いている人みんながミルコみたいな体格をしている。ストイコビッチが小さく感じる、そんな体格の人が、２５キロも荷物を背負って、かがんで泥水の中を歩くわけですよ。
想像しただけでつらそうです。
そのあと小屋をでて、実際のトンネルの残りの部分に潜ってみたりしました。今トンネルのほとんどは閉鎖され、ミュージアムの部分の少しが歩けるだけとなっています。
大変な時代だったんだなあ、としみじみ感じました。
周囲を見渡すと、あたりは相も変わらず田園風景。猫が平和そうに眠っていました。
平和そのものの景色の中に、トンネルが。
サニーさんに「この辺の地雷は撤去されたの？」と聞いてみました。
「この辺は大丈夫だよ」とのお返事。
それにしても、えぐいマップだわ。
広場です。
次にサニーさんが連れて行ってくれたところは、トンネルミュージアムから車で１０分ほどいった高台でした。眼下にサラエボの街を見下ろせる広場になっています。
快晴でした空は少し曇りだして、ぱらぱらと雨が降り出していました。
サニーさんは雨を気にせずに、広場の端に腰掛けて、街の方を指さします。
「あの黄色い建物がホリデイ・イン。戦争中、最前線でたびたび攻撃を受けたにもかかわらず営業していたことで有名。その手前に見えるとおりが、有名なスナイパー通り。この高台は、戦争中にセルビア軍が街を見下ろして攻撃を仕掛けた場所なんだよ」
確かに、ホリデイインとか丸見え。ていうか、街全体が丸見え。サラエボは盆地にできた街だから、攻撃はすごくしやすかったことは容易に想像できます。私でも狙えそう。
真ん中の黄色いのがホリデイイン。右端がユニスビルです
サニーさん曰く。
サラエボは、１５世紀ごろに街になった。サラエボは、オスマントルコ人の支配を受けて、その影響をうけるようになった、セルビア人、クロアチア人、ムスリム人が一緒に住む町だった。その後、オーストリア帝国の支配を受けることになる。サラエボ事件はあっちの橋で起きたんだ。しかし、その前もその後も、セルビア人、クロアチア人、ムスリム人、ユダヤ人が一緒に暮らす街だった。１９８４年は、オリンピックが開かれた。オリンピックスタジアムは、あの山の向こうにある。そして、１９９２年、セルビア軍が、この町を包囲した。
この辺まで聞いたところで、脳みそがサニーさんの話す英語のスピードを受け付けなくなって、脱落。(あうう)
あとはぼーっとサラエボの街を見ていました。きれいな街だけど、ここで戦争があったんだなあ、とぼんやりと考えました。
ホリデイインの見える広場の反対側も、緑の山が広がっていました。たぶんこちらはＲＳ側。
彼方の山は、オリンピックでスキー競技が行われたイグマン山だよ、とサニーさんは教えてくれました。
高台
高台を去ると、バスは再びＦＤ側に戻りました。街の南側の高台を川沿いにすすんで、バシチャルシア近くを走ると、方向を変えて、ミリャツカ川を渡り、ホテルサライの方へと走ります。急な勾配を登り切ると、サニーさんがバスから降りてと促してくれました。
バスがら降りたところに、城壁が見えました。人が一人通れる階段を上ります。先ほどの雨で、足下はすこしぬかるんでいました。
突然視界が開けて、薄曇りの空の向こうに、わずかな空の切れ目が伺えました。古い城壁の上の高台にでたみたい。
私の記憶が間違いでなければ、たぶんウェルカムトゥサラエボ（戦時中のサラエボの様子を題材にした映画です）のラストシーンのコンサートの広場だと思います。高台からの眺めはすばらしく、先ほどの場所よりもずっと綺麗に街を見下ろせました。
サニーさんは言いました。
「ココは特別な場所なんだ。サラエボ全体が見渡せる」
右端に見える三角の建物が、国立図書館。サラエボ事件で、オーストリア皇太子が暗殺される直前に立ち寄ったところ。紛争で中身は全部焼けてしまいました。
高台からは、バシチャルシアが一望できました。先ほど立ち寄ったモスク、正教会、公教会、シナゴーグ。それらが見事に調和した姿が、うっすらと霧に煙る姿は、幻のようにはかなく見えて。
そして、足下には、真っ白い墓がいっぱい地面に突き刺さっていました。全部お墓。いやもう、圧倒されるほど、お墓。痛々しいほどお墓だらけ。
サニーさんはここではあまり解説せずに、ゆっくりとたばこをふかして、ミリャツカ川の方を眺めていました。
〜〜〜〜〜
ここでだいたいツアーは終わりになって、バスで国立図書館の前でおりました。サニーさんとはここでお別れ。
英語力がイマイチなので内容をすべて把握できたわけではないけど、ツアー内容に込められたサラエボ住人の無言の言葉を聞いたような気がしました。
２５マルカでこの内容なら、なかなかいいと思います。個人でトンネルミュージアムに行くのも大変そうだし。
チェバプチチ。サンドイッチみたいな。
ツアーが全部終わったところで、だいたい２時。おなかがすいたので、お昼にしましょう、ということに。
せっかくだからチェバプチチとか、プリェスカビッツァとか、伝統料理たべたいなあ、とバシチャルシアをふらふら。チェバプチチの写真が看板にある軽食やさんに入ってみました。
サラエボ料理案内によると、ソムンと呼ばれるパンに、挽肉を焼いた団子を挟んだもの。タマネギ、ヨーグルトと一緒にたべる、とのこと。なかなかおいしかったですよ。ちょっと脂っこいので、タマネギを一緒に食べないと胃にもたれるかも。
おいしいなあ、とたべていたら、テイクアウトを頼んでいる地元のおばちゃんが、声をかけてきて、「おいしい？ ヨーグルトも頼んだ方がいいわよー」なんて言ってきてくれました。サラエボの人は気さくでやさしい。
一人前３．５マルカ。安い！
サラエボ旧市庁舎。紛争で中は燃えてしまいました。
サラエボといえば、日本人でも知っているサラエボ事件。
バルカンの火薬庫と言われた当時のサラエボで、オーストリア皇太子がセルビア人に暗殺されたことで第一次大戦が始まったという、世界的な事件。
じつはこのサラエボ事件、暗殺が起こる前に、一度暗殺未遂事件が起きています。
オーストリア皇太子はいちどこの建物（当時は市役所）に戻ってきます。しかし、フェルディナンド皇太子はもう一度パレードに出向き、橋の上でセルビア人青年プリンツィプに暗殺されてしまうのです。
その現場がこの石橋。
サラエボ事件現場となった橋
紛争前は、プリンツィプは、オーストリアからの解放を行った英雄とされ、橋の名前もプリンツィプ橋とされていました。しかし、紛争後は、プリンツィプがセルビア人でしたということから、名前はラテンスキー橋と変えられてしまいました。記念プレートもあったようですが、はずされてしまったとのこと。
橋自体はきれいでした。
さて、次なる目的地は、コシェボオリンピックスタジアム跡地。 紛争が激しさを増し、お墓が足りなくなったためにかつてのオリンピックスタジアムをお墓にしたとのこと。 歩いていきましたが、結構距離有り。途中でアメリカ大使館を見ましたりしたな。タクシー使う方が正解かもしれづ。私は長距離を歩くのは平気なほうなので大丈夫でしたが、ラテンスキー橋から一時間くらいかかりましたかなあ？ どうにかこうにかたどり着いた時には夕暮れ時でした。 １９８４年のオリンピックの跡がそびえ立つコシェボスタジアムを乗り越えて、もう少し坂をのぼると、眼下に一面の墓が広がっていました。
白っぽく見えるの、全部お墓です……
一面、お墓。先ほどのセルビア人が街をねらったという位置の真向かいにある山の裏側です。
覆う地面が白く見えるほどの墓の数。 これだけの数の人が亡くなったのかと思うと、言葉もでません。
墓に沿って、細い道が遠くの住宅地に続いています。その道を、一組の老夫婦がゆっくりと歩いているのが見て取れました。
彼らは、この墓にいる隣人たちの死を目にしたのでしょうか。
彼らはゆっくりと歩いていきました。ゆっくりと、ゆっくりと。
サラエボのディナー。超美味！！
オリンピックスタジアムから帰ってくる途中で、雨が降ってきました。幸い折り畳み傘を持ってきていたので助かりましたが、足下はげしょげしょ。
本当はこの日はロンプラにも地球の歩き方にも載っているイナットクチャっていうところで晩ご飯食べたかったんだけど、バシチャルシアについた時点で、もう歩きたくない！ということになり、別のお店に変更。
バシチャルシアの中にある、モリチャ・ハンというところでゴハンをいただくことに。いや、この選択、正解でしたよ。
このお店、昔はトルコの隊商宿として使用されていたとのことで、なかなかこった作り。絨毯やさんの奥にあります。
中にはいると、入り口に座り込んでだべっていたおっちゃんたちがさーて仕事するか、ってかんじで案内してくれました。
本当はワインを飲みたかったのだが、このお店、アルコールはおいてないとのこと。そこで、おっちゃんオススメのレモネードをいただいて乾杯。
前々から食べたかったサラエヴンスキサハンというビーフシチューみたいなやつと、ハウススペシャルとかいう料理を頼んだのですが、おいしかったなああ。ほんっっとうにおいしかった。とくにハウススペシャルがおいしかった。ハッシュドビーフにパプリカが入っていて、上にサワークリームが盛ってあるわけですよ。パンもおいしいし、最高。雨で冷えた体も温まりました。
最後にトルココーヒーをいただきましたが、これもおいしい。トルココーヒーはとても気に入りました。
おまけについてくるロクムというお菓子がういろうみたいな味なんだけど、コーヒーとすごくあう。
大満足の晩ご飯で２０マルカでした。